物語
「俺はどうしてこんなところへ来たんだ?」
十代で家族を亡くし、
今はガテン系バイトを掛け持ちして暮らす主人公の日天。
バイト漬けの日々を送っていたある日、
暗い路地に入って行く喪服の青年に目を引かれ、
彼が白い花束を落としたことに気づく。
放っておけず、思わず花束を拾ってあとを追う。
しかし、暗く長い路地を抜けた先で青年を見失った日天は、
気がつくと、異界の入り口に――「宿」に立っていた。
呆然とする中、宿の住人たちに迎え入れられ、聞かされる。
そこは、死が遠い世界だと。
頭を潰されても喋る男に、自分の生首をボールにして遊ぶ子供。
そして、恐ろしい異形たち。
そんな不気味なものたちがうごめく世界へ
ただ一人の生身の人間として迷いこんだ日天は、
元の世界へ帰ろうとするが、その道はどこにもない。
それでも日天は、宿の住人の力を借りて、帰還する方法を探す。
生者の匂いに群がる死者たちが住むという「町」へ乗りこんで――。
命がけの捜索の果てに、日天が見つけたものは……?
主人公・日天の迷い込んだ世界
現世にいる人間が何らかの理由で意識を失った者たちが住む「宿」と、
現世で死を迎えた者たちが宿を出た後に暮らす「町」から成る世界。
この世界に住む全ての人間は精神体なので、
怪我をしたらその身体からは血は流れるものの時間と共に再生し
たとえどんな致命傷を負ったとしても死ぬことは無い。
それ故に、この世界で過ごす時間が長くなればなるほど死の概念が薄れ
痛みに疎くなる為、特に町の住民は倫理感や道徳心が薄くなる傾向がある。
「宿」は、昭和の古き良き雰囲気漂う3階建ての木造建物。
木の温もりと年季が感じられる建物内には、各々の部屋の他に
住人達が集まる畳張りの広間、くつろげるラウンジ、広い庭や大浴場等があり
ゆったりとした時間が流れている。
この「宿」には、現世で何かしらの理由により意識不明になった人間が訪れる。
宿での暮らしは強制ではないため、
現世へ帰りたいと願えばすぐに帰る事も出来るし、そのまま宿に逗留する事も出来る。
「宿」の前にある坂を下った先に、「町」が広がっている。
商店街や住宅街、神社、学校、火葬場などがあるノスタルジックな田舎町。
この「町」には、
宿に住んでいる間に現世で肉体が死を迎えた者の中から選ばれた一部の人間達が住んでいる。
町の住民は個人差はあるものの、頭部を使ってボール遊びを行う子供や
自らの臓物をファッション感覚で身に着ける等、倫理感や道徳心が薄い人間が多々存在する。
日天から出る「生」の匂い
死の概念から解放され、現世とは倫理観や価値観が違う世界へ
「生身の身体」で迷い込んだ唯一の人間・日天。
「生身の身体」から無自覚に放たれる「生きている匂い」は
この世界に住む者達が無意識に抱く生への執着心や羨望をし強烈に惹きつけてしまう為、
命を脅かされることになる。
異形
この世界に巣食う化け物。外見は様々。
日天の匂いに最も強く反応する存在。